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ログのつらなり

書評:進化する銀行システム ~ 24時間365日動かすメインフレームの設計思想

今年2月に発刊された『進化する銀行システム ~ 24時間365日動かすメインフレームの設計思想』読了。
https://www.amazon.co.jp/dp/B01N5UXXO2/

第1部では、第一次オンラインから始まって、第二次~三次~それ以降と、日本の銀行がどのようにして勘定系システムを拡大していったかが書かれている。
第一次オンの最初のシステムは三和銀行のもので、この時の H/W は東京オリンピックで競技データの集計に使われていたマシンを流用したものなんだそうだ。へぇー。

第2部・第3部では、主にミドルウェアである IMS(/DB,/DC) がどのようにして性能と可用性を実現しているのかが詳述されている。少なくとも日本語では類書がないので、これは非常に貴重な情報だと思う。
メインフレームクラスタリングと高速化のキモは CF(Coupling Facility)という外付けの専用 H/W で、中身は共有メモリということらしいのだけど、これ SPOF にならないんだろうか?実は以前から疑問に思っているのだけど、残念ながらそれはわからなかった。が、全体的には十分すぎるほど細かい説明がなされていて読み応えがある。

最後の第4部では、銀行の勘定系は今後においてもメインフレームが使われ続けるだろうという主張が書かれている。特に第14章では、"ベンダー側にて日本の銀行向けの特別なテストを徹底的にしている" といった趣旨のことが書かれており、「さすが」というか「やっぱり」というか、どうやらこのあたりが本当の『勘定系がメインフレームでなければならない理由』なんだろうな、という感想。
第2部~第3部で詳述されている技術自体には、オープン系でも類似の技術が既に存在しており、正直メインフレームでなければ実現できない秘密の何かがあるわけでは無さそうだった。しかし、こういう良くも悪くも地道な努力が安定性を支える柱であり、アーキテクチャというより歴史的な経緯や商習慣などが相まって『マネが出来ない』ということなんでしょうね。