仕事着としてのスーツの要件を実装してもらいました

いわゆる『要件定義』の工程を踏んだスーツが出来上がりました！
要件を振り返りながら製造工程の結果をレビューしたいと思います(厳しい！)。長文ご容赦。

≪要件リスト≫
(1) 全体的にスレに対して丈夫で、シワになりにくいこと
(2) ケータイ2個(社用/私用)＋名刺入れ＋財布を上着の内ポケットに入れても型崩れしないこと
(3) 上着を着ないとき、パンツのポケットにケータイ2個と自宅の鍵を入れても不自然じゃないこと
(4) 自宅のカギをパンツのポケットにしまっても、カギ裂きが出来ないこと
(5) それでいて、外見上はあくまでも『スーツ』であり、TPO的に不自然じゃないこと (釣りジャンでも着ていればいいじゃん、ってわけにもいかんのですよ)

■要件１：全体的にスレに対して丈夫で、シワになりにくいこと
→ 通常より糸を強く撚ってあり(1000～2500回転/m)、それを2本撚り合わせた(2PLY)生地を採用。
コシが強くシワになりづらい分、正直いえば若干ゴワゴワしているところもあるけど、それは仕立ての良さ＝体にフィットするように調整していただくことでカバー。

■要件２：ケータイ2個(社用/私用)＋名刺入れ＋財布を上着の内ポケットに入れても型崩れしないこと
→ ケータイと名刺のサイズを計測し、仮にケータイ２つを同じポケットに入れてもシルエットに影響しないように、みぞおち左右の少し凹んだところに収納物がくるように調整。
普通のスーツではカドが膨らんで不自然になるところを、見事にわからないように仕立てていただきました。
財布の収納は、ジャケット内側のやや下にある通称「シガーポケット」を流用。こちらも現在使っている財布を計測して、スムーズに出し入れができるようにポケットの口巾と深さを調整していただきました。

■要件３：上着を着ないとき、パンツのポケットにケータイ2個と自宅の鍵を入れても不自然じゃないこと
→ これが最も画期的な仕立てで、パンツの左足の付け根に、お尻のポケット(ピスポケットと呼ぶようです)と同じような形のポケットを増設していただきました。これで夏場にジャケットなしで行動しても仕舞い場所に困ることはなくなります。丁度太モモの上にケータイが乗っかるような形に収まることで布地に負担がかからず、仮に座っているときにケータイが鳴ってもスムーズに取り出せる形になりました。
ちなみにお尻のポケットは、座った時にプレッシャーがかかりすぎて物を収めるには適さないと考え、カウントに入れていません。通常は左側の尻ポケットにはボタンをつけることが多いそうですが、こちらも同じ理由で取れやすく、取れたらみっともないので今回は敢えてカットしています。

■要件４：自宅のカギをパンツのポケットにしまっても、カギ裂きが出来ないこと
→ 昔は懐中時計をしまったといわれるウォッチポケットを流用。これはパンツの右側のベルトループの付け根にあり、フォブポケットと呼ばれることもあるそうです。ここにモノをいれても殆どシルエットには響きません。『カギ裂きをつくらないように』という部分は、革製かつ最低限のシェイプのキーホルダーを使うことによりスーツ以外の部分でも工夫しています。

■要件５：それでいて、外見上はあくまでも『スーツ』であり、TPO的に不自然じゃないこと
→ 要件３で増設した少しイビツなポケットの存在は、上着を着ると隠れるように出来ています。実は当初、カーゴパンツのように膝の横にポケットを増設するアイデアもありましたが、それはさすがに少し奇抜ということで却下とし、外から見るとあたかも普通のスーツに見えるような結果に落ち着かせることができました。

ということで、いやぁ満足です。でも着込んでからが本当の勝負。着込んだあとに具合が悪いところが見つかったら、次回オーダーで少しづつ改良していきたい気持ちもあります。上手くいくようであれば他の方にも広めたい！ご興味のある方はご連絡ください！